書いた人:村田有司(英会話講師・翻訳者)
このページにたどり着かれた方のほとんどが、何らかの理由や目的で英語や英会話を学びたいと思っておられるはずです。
ただ、学生時代に英語が苦手だったり、英語の勉強から離れてかなり時間が経ってしまったというケースが多いのではないでしょうか。
英語を話したいけれど勉強法がさっぱり分からず、何から手を出していいやら途方に暮れてしまっておられるかもしれませんね。
ここではそんな方に英語の基礎から始める勉強方法をお教えします!
具体的な勉強法に入る前に、まずはやってはいけない3点についてお話しておきます。
もしも初心者で以下のような方法で勉強しておられるとしたら、早い段階できっぱり止めてしまうのが得策ですよ。
初心者がやらない方がいい3つのこと
1.「30日間であなたも英語がペラペラ」のような、すごく魅力的なキャッチコピーのネット教材や書籍に飛びつく。
それが本当なら既にペラペラの日本人ばかりになっているはずですよね(笑)
また「聞き流すだけ」の教材も初心者の方にとっては無駄遣いに終わってしまう可能性が非常に高いので手を出さないようにしましょう。
2.英語本に次から次へと手を出す。
まずは自分に合う英語本をじっくり時間をかけて探しましょう。
「これだ!」と思うものを見つけて購入したら、その教材に集中しましょう。
まず最低1度は最後までやってみてください。
途中で、
「この教材をやってて本当に英語が話せるようになるのかな?」
と疑問がふつふつ湧いてきても、まずは一通りがんばって終わらせましょう。
ちゃんと最後までやれば自分の中でも少し英語に対する感覚が変わってきたのが分かるはずです。
よい教材だと思われたら、2,3度復習してください。
8割以上理解していると思うページは飛ばしてしまっても構いません。
1回目よりもはるかに理解度が上がっているはずです。
既に何冊か英語本を持っておられるケースも多いかと思います。
そのような場合は、その中から1冊選んで集中的に取り組んでみるのも良いかと思います。
3.ネイティブや外国人のレッスン
いずれはネイティブや外国人の先生に習うということを目標のひとつにされるといいかとは思いますが、初心者の方はまず日本人講師でスタートされるといいでしょう。
ネイティブの講師は、当然発音がよく、表現のストックも豊富なことが魅力ですが、初心者の方はそのようなことよりも、基礎的な会話をできるように手助けしてくれて、たくさんの基本的な疑問を解決してくれる講師のスキルや知識を取る方が確実に英語が話せるようになる近道です。
初心者がやった方がいい5つのこと
さて、いよいよ英語の勉強法ですが、ここでは5つに分けてご説明します。
英会話初心者の方が英語学習の再スタートを切る場合には、以下の5つの取り組みが必要です。
- 目標設定
- 単語、慣用句などの語彙力
- 文法
- 発音
- リスニング
1.目標設定
勉強法ではありませんが、極めて大切なポイントなので敢えてここで触れておきます。
英語学習を始めるときは何はさておき明確な目標を設定からスタートしましょう。
英語学習は陸上で言うと短距離走ではなくマラソンです。
しばらく運動をしていない人が急に思い立って1ヵ月後のマラソンでの完走を目標にするなんて無謀なことは普通しませんよね。
せめて1年後のマラソンで完走することを目標にして、それまでにやらないといけないことを設定して、ひとつひとつクリアしていくのではないでしょうか。
英語の場合も一緒で、決めた期間までになりたい自分をできる限り鮮明にイメージしてください。
これが英語学習のまず第一歩です。
では、いよいよ具体的な勉強法に入りますが、先ほど挙げた2~5までの具体的なスキルを向上させるために、まず1冊教材を選びましょう。
各スキルのために専用の教材を購入する必要はありません。
勉強をスタートする前はモチベーションも高いので、本屋であれこれ購入したくなる気持ちも分かりますが、ここは敢えて1冊で抑えておきましょう。
できればその1冊の中にダイアローグ(会話)と文法の解説があり、それに絶対に外せないのがダイアローグ等を収めたCDが付属していることです。
音源をネットからダウンロードできるタイプのものでも大丈夫です。
すべてのトレーニングを同じ教材で行えば、財布にも優しいですし、「あれもこれもやらないといけない」と思い始めると、英語学習が楽しくなくなり、さらに苦痛になったりします。
継続のためには、ある程度精神的に余裕があり、楽しむことができることが必要ですので、少し楽なところからスタートしましょう。
今回は、レベルやトピックも豊富なNHKの英語講座の教材を例にして説明していきます。
2.単語、慣用句などの語彙力 - 教材の中の単語、慣用句、表現を音読しなら覚える
語彙力は外国語を使おうとするときに最低限必要なツールです。
英語を使って何かをしようとしても、語彙力がないと手も足も出ません。
指さしやジェスチャー、それに翻訳アプリなどを使ってどうにかコミュニケーションを取るはめになります。
最低でも必要な単語を知っていて、それを連呼すれば相手が理解をしてくれるかもしれません。
そしてそこに文法をプラスすれば、ちゃんとした会話のやり取りができる下準備が整います。
単語を覚えるのに学生時代だったら単語帳やボキャビル本を使ったりしましたよね。
英単語と日本語訳を順番に覚えていくわけですが、受験が目的であればこれで対応できるでしょう。
でもこれから英語を話すために単語を覚えることを考えると、このような方法は避けましょう。
初心者の方は、単語帳を片っ端から覚えようとせず、教材にでてきた単語で自分が将来必要になるだろうと思われるものを中心に覚えていきましょう。
また英単語を日本語訳と一緒に覚えるのではなく、文脈で覚えていけば、実際の場面で覚えた単語を使えるようになります。
例えば
interestedという単語を日本語で「興味がある」とだけ覚えたとしましょう。
外国人との会話の中で、「日本に興味があるのですか?」と質問する場面で覚えたinterestedが使えますよね。
でもinterestedを「興味がある」とだけしか覚えていないと、文の中でどう使うのかが分かりません。
Do you interested Japan?
Are you interested Japan?
などと言ってしまうかもしれません。
でも、教材の中に使われていた
I am interested in music.
という一文を覚えていたら、これを応用して
Are you interested in Japan?
と聞くことができます。
では、単語を覚える具体的な方法ですが、音読を中心に行います。
NHKのテキストだとある程度のダイアローグがあるので、その部分を使います。
放送で解説を聴き、ダイアローグの内容が理解出来たら、自分がその人物になった気持ちになって音読をします。
それほどダイアローグが長くないので、せめて30回は音読しましょう。
音読する際には発音、アクセント、それにイントネーションにも気を付けましょう。
(これらのトレーニング方法は後ほど触れます)
そしてなにより大切なのは、自分が言っている英語の意味を頭の中でイメージとして浮かべることです。
こうすれば、日本語を使わずに自分の思ったイメージと英語を結びつけることができます。
例えば、I am interested in music.だと、この文を言いながら、同時に好きなCDを聴いている自分の姿を浮かべます。
interestedという単語を覚えたいと思っても、「がんばって覚えるぞ!」とフラッシュカードを作成して覚えたりする必要はありません。
今回の音読や他のトレーニングをしている間に自然と覚えてしまうからです。
語彙力を伸ばすには、まずは教材の音読をしましょう。
3.文法 - 教材の中の文法事項をしっかり理解することから始める
文法にあまり自信のない場合は「NHKラジオ基礎英語」をおすすめします。
ストーリーを通して英語を楽しむことができ、さらにきっちり文法の解説もしてくれています。
また念のためにやさしく文法を説明した教材を用意しておいて、もっと詳しく知りたい時に該当するページを参考にされたらバッチリです。
おすすめは
- 「中学校3年間の英語が1冊でしっかりわかる本」濱崎 潤之輔 (著) かんき出版 (2017/1/7)
やさしい説明と練習問題があり、文法の基礎がしっかり身に着きます。 - 「一億人の英文法 ――すべての日本人に贈る「話すため」の英文法」
大西 泰斗, ポール・マクベイ (著) ナガセ (2011/9/9)
著者はテレビなどですっかりお馴染みの大西泰斗さんで、極力文法用語を使わずにネイティブの感覚を理解できるような説明がされているのが特徴です。
様々なレベルに対応しています。
4.発音 - シャドーイング
発音、アクセント、イントネーションを良くするにはシャドーイングが効果的です。
このトレーニング法を聞いたことがある方も多いかと思います。
ずっと離れずについてくるシャドー(影)のように、英語が聞こえた直後に聞こえた通りに発音していくトレーニング法です。
I'm interested in music.
と聞こえてきたら、1秒遅れくらいで
I'm interested in music.
と言います。
慣れるまでは少し大変かもしれませんが、ものすごく効果的な方法なので、ぜひ取り入れてください。
途中で混乱してしまい音源についていけなくなったら、いったん発音するのを中断して、後についていけるようになった時点で改めて再スタートします。
英語のシャドーイングに入る前にまず日本語でシャドーイングをして慣れるという手もあります。
例えば6時のニュースなどを使い、キャスターが読むニュースの後をシャドーイングします。
イヤフォンを使用するのであれば、右耳にイヤフォンを入れて放送を聴きます。
左耳からは当然自分の出した声が聞こえてきます。
日本語なのに、これが意外に難しいことは一度チャレンジしてみられれば、すぐにご理解いただけると思います。
リスニングだけに集中すると発話できなくなるし、発話に意識を置きすぎるとリスニングがおろそかになります。
上手く意識をコントロールして、リスニングと発話に意識を振り分ける必要があります。
このシャドーイングをしていると、発音やアクセントはもちろんのこと、文のイントネーションまで意識できるようになります。
聞こえてきた音と自分の発した音が違うと違和感がありますので、そこを修正していけばどんどん良くなっていきます。
ご存知かもしれませんがNHKのラジオ講座はネットでの放送もあります。
またラジリンガルというソフトを使えば簡単に録音も可能です。
(ダウンロードは以下のページから)
5.リスニング - シャドーイング
リスニング力の向上のためには、まず英語を聴かないと始まりません。
ただ聞き流していてもあまり効果は期待できませんので、短時間でも集中して聴くことが大切です。
そこで登場するのが発音の所でも出てきたシャドーイングです。
そこにも書きましたが、シャドーイングをする際には、意識はリスニングに半分、発話に半分でしたよね。
すべての意識をリスニングに充てることができないので、その分、半分の意識で聴き取る力が養われるということになります。
初級者の方は使われている語彙の80パーセント以上を知っている教材を選んでください。
目で見ると「ちょっと簡単かな」と思える程度がちょうど良いレベルです。
それ以下になると、知らない単語などに意識が行き過ぎてしまい、うまくシャドーイングができなくなります。
NHKのラジオ講座を教材としているなら、そのダイアローグ部分を使います。
テキストも用意しておいてください。
シャドーイングをしてみると、「こう発音する」と勝手に思い込んでいた単語やフレーズが全く違って発音されていることが結構あります。
またリンキングといって単語と単語がつながる現象もあります。
例えばnot at allの3語がnotatallと1単語のように聞こえます。
このような場合、文字で読めば知っている簡単な単語なのに、音になると途端にその単語やフレーズが分からなくなってしまうということが起こります。
その多くは同じように発音できなくても通じることが多いのですが、聞き取れないと困ることがあります。
何度聞いても聞き取れない単語はテキストで確認します。
そしてシャドーイングをしながら、思い込んでいた発音と実際の発音の誤差を埋めていけばリスニング力も必ずアップしていきます。
シャドーイングは慣れてしまえば、それほど難しくはなく、とても効果があるトレーニング法ですので、英語学習にぜひ取り入れていきましょう。