書いた人:村田有司(英会話講師・翻訳者)
(疑問)「英会話を始めてみたいけど、実際に話せるようになるの?」
(回答)「英語は必ず話せるようになります」
もちろんこれには条件があります。
「1ヵ月で英語がペラペラ」なんて魔法はありません。
話せるようになるためには、基礎練習、練習試合、公式戦をこなすことです。
「そんなこと言っても、実際に話せるようになったという人が周りにほとんどいない」
「英会話には何度かチャレンジしたけど、結局は挫折した」
「英語が話せるようになる人はごく限られた人だけなんじゃないの?」
などと反論が出てきそうです。
では何らかの才能を持っていないと、あるいは何年か海外に住まないと話せるようにはならないのでしょうか?
答えはNo!です。
その理由をお話しする前に、まず「英語を話せる」ということを定義してみましょう。
例えば日本語ネイティブの私たちでも日本語のレベルはいろいろです。
アナウンサーのように正しいイントネーションで淀みなく話せるプロもいれば、語彙や表現力が不足気味で話が分かりにくい人もいます。
レベルの差はあってもみんな日本語を話していますよね。
また外国人の旅行者が片言の日本語で
「これ、すごくおいしいです」
「すみません、駅はどこですか?」
と言われたとしましょう。
つい「上手に日本語話されますね」と言ったりしませんか?
このようなことから考えると「英語を話せる」というのは、結局「他の人と英語を使ってコミュニケーションが取れる」と言い換えられると思います。
また逆にいくら英語を発したとしても、それで相手とコミュニケーションを取れなければ、英語を話しているとは言えません。
例えば、レストランの注文でウエイターに
”How would you like your steak?"「ステーキの焼き加減はいかがいたしましょう?」
と聞かれ、
”Yes, I really like steak. I couldn’t live without it.” 「ステーキが大好きで、なかったら死んじゃうかも」
と流暢に答えたとしましょう。
文法的には正しい英語を発していますが、全く意思疎通ができていないので、英語を話しているとは言えません。
いわば独り言と同じです。
言い換えれば、買い物やレストランでの注文が英語でできれば「英語を話せる」と言える人もいれば、仕事において高度な英語で交渉相手と意思疎通ができて初めて「英語が話せる」という人もいるわけです。
ですので、まず考えていただきたいのは自分なりの「英語を話せる」を定義してください。
「日常英語が話せる」や「旅行で英語を話せる」といった漠然なものではなく、もう少し細かく定義しておきましょう。
では具体的に「基礎練習、練習試合、公式戦をこなす」についてお話します。
1.基礎練習
語学の習得はスポーツや楽器、それに車の運転のそれとよく似ています。
つまり、しっかりと基礎練習を積み、練習や練習試合などで弱点に気づき、公式戦や発表会、実際のドライブなど楽しみながら更に上達をめざすということです。
どの過程もおろそかにすることはできません。
ほとんどの方がこのことを理解しているのに、なぜか語学となると勘違いされておられる人が多いのが現状です。
例えばスポーツ、楽器、それに車の運転が「1ヵ月でプロ並み」と謳っている書籍などがあっても誰も信じないでしょう。
でも言語になると「1ヵ月で英語がペラペラ」などという本をつい買ってしまったことがある方も多いはず。
こんなことが事実ならとっくの昔に多くの日本人がその方法でペラペラになっているはずです。
繰り返しますが、英語を話せるようになりたければ、まずは基礎練習、練習試合、公式戦をこなすことです。
それではもう少し詳しくそれぞれのステップを見てみましょう。
まず基礎練習ですが、スポーツだとラケットやクラブの握り方、基本のフォームを覚え、素振りなどです。
ゆっくりとボールを打ったりしながら慣れていくのもこの段階です。
実際の対戦前にルールをしっかり覚えることも必要不可欠です。
ルールを全く理解せず試合をするなんて問題外ですよね。
英会話でいうと英語学習本やCD、それにラジオ講座などで基礎力を身に着けるステップです。
文法なんかやらなくても実践を数多くこなせば話せるようになると豪語する強者もいますが、間違いなくブロークン止まりです。
本人が通じると思っているだけで、誤解されていたり、相手にかなりの負担を強いていることに気づいていません。
タレントの出川哲朗が英語を話している所を見た人なら納得していただけると思います。
あのような方法で何時間英語を話したとしても、それほど上達は見込めません。
文法や単語を学ぶことが苦痛とか面白くないと思っておられるかもしれません。
それにはいくつかの理由があります。
まず一つ目が、しっかりした目標がないからです。
例えばゴルフを始める際に、早く100を切って3年後にはハワイのコースでプレーしたいと本気で思っておられたら、打ちっぱなしに行くのが楽しいはずです。
英語も、しっかりとした目標を持っていれば、
「この単語、次の旅行の買い物の時に使えるかも」
「この表現が使えたら、初めて会った人ときっと会話を弾ませることができる」
などと気付くこともあり、苦痛ではなくなるはずです。
そしてもう一つ考えられる原因は、方法自体が間違っていることがです。
自分に合わない方法だと楽しいはずがありません。
他人が勧める方法を鵜呑みにしてしまわず、しっかり自分に合った方法を見極めましょう。
初心者の英語の勉強の仕方を以下のページで触れていますので、参考にしてください。
2.練習試合
さて、ある程度の基礎力が着けば次に練習試合に望みましょう。
ここで注意したいことが1点あります。
「もうちょっと話せる自信が着いたらチャレンジしよう」
と決して思わないことです。
こんなことを思っていると一生話す機会には恵まれません。
英会話の体験レッスンでときどき似たようなことが起こります。
せっかく体験レッスンを申し込んだのに、いざその日が近づいてくると不安になり、キャンセルをしてしまう人がいます。
確かに体験レッスンとなると少し勇気が必要ですよね。
先日、海外のあちこちに旅をしている人が発した一言が印象的でした。
”Magic happens outside of your comfort zone.”
「奇跡は今いる居心地の良い場所を出ないと起こらない」という意味です。
自分の領域にいると不安を感じず、勇気もいらず、のほほんとしていられます。
ただ、チャレンジもしていないので、夢や目標に手が届くこともありません。
「大丈夫かなぁ」「ちゃんと話せるかな」などと不安になりながらも、少し勇気を出して体験レッスンを受けられた方のほとんどは、「受けた良かった」と思われて一歩前に進まれます。
一方、不安に負けてしまい、居心地の良い場所に留まることにした人は、結局全く前に進めないということになります。
ここで覚えておいていただきたいのは練習試合は勝つことよりも、負けて自分の弱点を知ることに意味があります。
しっかり使える表現を言えることにそれほど意味はなく、言えなかったことが何かを知ること、そしてそれを踏まえて練習し、言えるようになることが重要なんです。
また英会話を独学で頑張っておられる方に関しては、卓上の勉強だけになりがちです。
いくら本などでルールやボールの打ち方を頭に叩き込んでも、実際やってみると思ったように体は動いてくれません。
英語もルールを頭でどれだけしっかり覚えていても、実際何度も何度も声に出して体に覚えさせないと、いざいう時には使えません。
独学で頑張っておられる方は、ぜひ話す機会を作りましょう。
外国人観光客が多い場所に出かけていって声をかけるのもアリです。
アプリなどで外国人の友達を作るのも一手です。
そんな勇気がない方は、格安のオンラインレッスンもたくさんありますので、自分に合った方法でぜひ英語を話すようにしましょう。
この練習試合をせず、公式戦に進んでしまうと自信を喪失してしまうことになりかねません。
後から、
「こんなはずじゃなかった」
「今ならちゃんと言えるのに」
などなど後悔することが多く、得るものも少なくなってしまうかもしれません。
公式戦で自分の実力の100%を出すことはできませんが、練習試合でがんばっておけば、100%に近づけることができます。
3.公式戦
最後に公式戦ですが、これはその方の目標ということになります。
「海外旅行であまり不自由なく英語を話す」
「外国人の友達と色々な意見交換をする」
などです。
公式戦があるから日々がんばって練習ができます。
これがないと、日ごろの努力を楽しめず、修行のようになってしまいます。
苦行を耐えられるストイックな方もたまにいますが、ほとんどの方は挫折してしまい、途中で投げ出してしまうことになります。
「今回こそは話せるようになるぞ!」と思ってスタートするのに、結局挫折を繰り返している方。
「英語のセンスがない」とか、「物覚えが悪いから」とか、そんなことは英語を話せない本当の理由ではありません。
まずしっかりした、ゆるぎない目標を立てましょう。
人間の脳は面倒臭がりにできていますので、新しいことはまず排除しようとします。
でも違和感を感じながら3週間続けると、脳はその行為を重要なことと認識してくれるようになり、行わないと逆に違和感を感じるようになります。
こうなればこっちのものです。
英語を本気で話したい方は。まずは
「基礎練習、練習試合、公式戦」
の流れを作りましょう。